翼~開け放たれたドア~
「なぁ!春輝は…っ、春輝は助かったのか!?
春輝は無事なのか!?」

いつになく荒れた声をあげ、飛鳥が医者に詰め寄る。

その潤んだ瞳を見つめ、医者はよりいっそう顔を歪めると、コクリと頷く。

「一命はとりとめました…」

成功、したんだろ?

春輝は、生きてるんだろ?

ならなんで、そんな顔してんだよ?

そんな疑問がグルグルと回って、俺の胸を締めつけて。

あぁ…、どうしてこんなに苦しいんだ?

飛鳥は直に止められて、医者から離れてうなだれている。

他の奴らも悲しそうだ。

俺と同じ不安を抱えているんだろう。

だけど、そんな俺たちに追い打ちをかけるように

「ですが……、たぶん今夜が山でしょう…」

医者が、そんな残酷なことを言うから。

まるで、時が止まったかのように…身体が動かなくて……。

「そ、んな…、ことって…っ」

直が信じられないといったように、手で顔を覆い、身体を震わせる。

飛鳥は目を見開いたあと、「……クソッ!」と拳で壁を殴ってズルズルとそのまんましゃがみこんだ。

秋人は放心状態のほうにただ……カーテンが開けられてICUの部屋で眠る春輝のことを、泣きながら見つめている。
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