翼~開け放たれたドア~
「………わりぃ。けど、もう大丈夫だから!」

飛鳥は顔をあげて笑う。

その笑顔はなんだか吹っ切れた感じに見えて、俺はほっとした。

「な、空夜。俺、頑張ってみる!!」

「……そうか」

「俺、自分から役にたてるようにしていくべきだったんだ。
“たてない”んじゃなくて“たつ”んだ!
“人に求められるような人”になりてぇ」

飛鳥の目は、強い光を秘めていた。

時々していたあの冷めた目は、きっともうしないだろう。

「……飛鳥」

「……バカやろうが」

「…秋人。蓮……」

二人の声に飛鳥が振り向く。

秋人と蓮は、飛鳥にまであと数歩というところまでの位置で飛鳥をジッと見ていた。

「なぁ」

「なに?」

「お前さ……」

秋人の問いかけに、飛鳥がなに?と聞き返したにも関わらず、秋人は途中で言葉を詰まらせると、気まずげに蓮のほうに顔をそらす。

と、いうか…アレはたぶん……。

「「…………」」

あぁ…やっぱりか。

無言で目配せをした二人。

蓮は、黙ったまんまで飛鳥に近づいていき、秋人はそれを面白そうに見守っていた。

「え、何?なになになに?」

突然の蓮の行動にパニクって、同じ言葉を繰り返す飛鳥の頭を、蓮は容赦なくボカッと叩いてしまった。……しかも拳で。

痛いだろうが、まぁ俺はとりあえず何も言わないでおいた。

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