翼~開け放たれたドア~
“空夜”

俺を呼ぶ、あの優しげな声も。

“あれ、あれ。頭やって”

俺を見上げる、あの大きな瞳も。

“心配…してるの?”

俺の頭を撫でる、あの小さな冷たい手も。

俺は全部、手放せるのか?

「なぁ、春輝!」

──手放せるわけがねぇだろ!!

「お前はそれでいいのか!?」

「!!」

驚いたように俺を振り返った春輝に言葉をぶつける。

なりふり構ってなんていられない。

こいつのことでは……春輝のことだけでは絶対に後悔したくねぇんだよ!!

「戻ってこい!」

「……でもっ」

「お前が何考えてるか知んねえけど、俺がお前を手放すとでも思ってんのか!?」

声を限りにそう叫べば、春輝は顔を歪めて泣きそうな表情をみせる。

それでも、白い髪を揺らし来ようとしない春輝に痺れを切らした俺は、

「──…っ!!春輝!来いよ!!!」

腕を広げる。

「空夜…っ?」

「何を迷う必要あんだよ!何をためらってんだよ!
お前が求めてるものはどこにある!!?
自分の心に素直になれ!」

大きな目が涙で洗い流されていく。
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