翼~開け放たれたドア~
これは、1つの賭けだ。

もし春輝が俺のところへ来てくれるなら、俺はその小さな身体をこの腕のなかに閉じ込めて離さないだろう。

来てくれないならそれまで。潔く身を引く。

腕を広げたまんま、俺は春輝を見つめていた。

「……た…い…」

小さな、か細い声が微かに聞こえた。

やっぱりためらっているようで、聞こえないくらいの小ささで言う春輝。

「大丈夫だ。言ってみろ」

な?という俺を見て涙をこぼす。

春輝は震える声を絞り出し、だけど俺の目をジッと見つめながら、

「………空夜が、いい…っ」

──あぁ…。

こんなにもこいつが愛しいと思ったことはないだろう。

こいつが誰かを……、俺をこんなに求めてくれる。

好きで、苦しくて、切なくて。

なのに、心のなかは温かい何かで、確かに満たされていく。

「……春輝」

「く、うやぁ…っ」

「あぁ」

「……っ!空夜…っ」

「…春輝」

何度も俺を呼ぶ春輝がすごく愛しい。

こんなにも好きで、苦しくなるのも、切なくなるのも…こいつだけなんだ。

「空夜…、そっ、ち行って、も…いい……?」

ほら、こんなにも…俺の胸は締めつけられる。

「当たり前だ。………ほら、おいで」

俺は微笑んだ。

俺の言葉に吸い寄せられるように、白い髪を揺らし、紺色の瞳いっぱいに涙をためながら、春輝が俺めがけて走ってくる。
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