翼~開け放たれたドア~
それでもなお抵抗する春輝に、俺は正直に「…俺はお前の顔が見たいんだけど」と伝える。

春輝は肩を揺らし、そして恐る恐るといった様子だが少しずつ手の力を抜いていった。

完全に手が降りると、俯かせていた顔をあげてから、覗き込むように俺を見上げ、「……ほんと?」と問い返してきた。

潤んだその瞳に吸い込まれそうだ。

ぐらりと揺れた理性。

「あー…、ちょっとやべぇ……」

しかもここベッドだし。

思わず顔をそらした俺だが、でもやっぱりちら見してしまうのはまぁ…男だしな。

だけど、不安そうに見つめてくる春輝を見て、俺の行動でちょっと春輝を傷つけてしまったことを知って、俺は安心させようとしてクシャリと頭を撫でた。

だけど、そうすることによって春輝がすげぇ優しい目をして俺を見てくるから、俺にとっては逆効果だった。

そのふわりとした笑顔に俺の理性はマジでヤバいことになってるっていうのに、春輝が俺の服の裾をきゅっと掴んで、もっと、とせがむからホントにたちが悪い。
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