翼~開け放たれたドア~
「いいか、お前ら」

決して大きな声じゃないのに、空夜の声は威圧感に溢れていて、総長なんだなって思った。

「こいつ、篠原春輝は、今から王覇の姫だ」

“姫”という言葉が出た瞬間、倉庫は一気にざわついた。

姫って何?聞いてないんだけど。

いや、姫がどういうのかは知ってるけど。

王覇が守ると決めた子のことだよね?

……守られるなんて、いやだ。

私はそんなことしてもらうような人じゃない。

「ち、がう…」

空夜に首を横にふった。

「私は守られるような人じゃない…」

こんな奴、守らなくていい。

だって、そうでしょ?

──私はいらない子なんだから。



空夜は、口を開いた。

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