翼~開け放たれたドア~
私なんて、ほっとけばいいのに。

「空夜、おろして」

空夜は無言で私をおろす。

人は嫌い。怖い。

だけど、私は震える身体を動かして、手すりに手をかけそこから飛び降りた。

ざわつく人を無視して、青い髪の人の目の前に歩いていった。

私を見下ろす彼の目は戸惑いに満ちていた。

「青髪」

「お、俺?な、なんでしょうか」

「好きな人守りたいって言ったよね」

「は、はい」

決意が滲んだ目は、私の胸を締め付けた。

好きな人…か。そんなの私には

「分からないんだよ」

「は?」

「私には“好き”が分からない」



暗い、暗い、闇の中でジッとしてる。

迷ったからじゃない。

もとから私はここだった。

ギュッと握りしめた手は赤くて、人は皆、奇怪なものを見る目を向けた。

みんな、“私”を否定する。

逃げられない籠のなかで、私はなにも感じなくなった。

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