明日、嫁に行きます!
翌朝、私はギシギシ軋む重い身体をなんとか起こしてシャワーを浴び、朝食作りを始めた。
身体中が悲鳴を上げていて、正直立っているのも辛かった。
昨夜もそうだが、何度も求められ続けて、途中で意識を手放してしまったんだ。
「……あの人、一体いくつなの」
素直な疑問が口を吐く。
あれくらいの年齢ならば、もっとこう、淡泊なイメージがあったんだけど。
全く淡泊でなかった昨夜の行為を思いだしてしまい、ボンッと音を立てて顔に熱が集まり出す。
的確な表現をするなら、そう。
「絶倫」という言葉が1番相応しい。
セックスをすると、彼はケダモノに変わる。私がどれだけ「もう終わりにして」懇願しても、聞き入れてはもらえない。
私は呆れの混じる溜息を吐いた。
「……私は月に1回で充分だわ」
あんな濃厚な行為は。私こそ淡泊な発言をしてしまう。
「寧音ッ」
バタンッと大きな音を響かせながら、寝室の扉が乱暴に開け放たれる。
……前も同じことあったな。
なんて思いながら、
「私がいないと思ったの?」
ニッと笑って聞いてやる。
「貴女が隣にいると、どうやら深く眠りすぎてしまうようです……」
――――今まではそんなことなかったのに。
悔しそうに呆然と呟く鷹城さんに、私は吹き出してしまった。
「いいことじゃない。深く眠れるんだから」
「ダメです。眠っている間に、また貴女に逃げられたら困る」
なんて真顔で言うものだから、今度こそ声を立てて笑ってしまった。
「……これはマズいですね」
鷹城さんは、眉根を寄せながら思考の海に深く沈んでしまう。
「ほら、シャワー浴びてきたら? ご飯すぐ出来るよ」
私の声にハッと顔を上げた鷹城さんは、「わかりました」とだけ答え、大人しく浴室へと消えた。
後ろ姿を目で追いながら、『可愛いな』なんて思ってしまったことは、彼には秘密。
クスクス笑いながら、私は朝食の準備に戻った。