明日、嫁に行きます!
「寧音。昨日お祖母さんから電話がありまして、貴女に逢いたいそうなんです。今日、仕事が終わったら一緒に行ってもらえませんか?」
朝食を終え、食器を洗う私に鷹城さんは声を掛けてきた。
「ええ!? お祖母さんにまた会えるの!? 行くっ、行きたい!」
嬉しい申し出に、私は手を止めて鷹城さんに駆け寄った。
「凄く嬉しそうですね。……妬けてしまいます」
不機嫌な顔を向けられて、うっと言葉に詰まった。
どんだけ嫉妬深いのか。自分のお祖母さんにまで嫉妬するって。
笑顔がヒクリと引き攣ってしまう。
「では、そのように伝えておきますので」
鷹城さんはくすりと笑うと、私の頭にポンと手を置きよしよしと撫でてくれる。
子供じゃないと唇を尖らせる私に、掠めるように口付けられた。
「いってきます」
「う、うん。いってらっしゃい」
今のキスってもしかして、いってきますのちゅう?
気恥ずかしくて、顔が熱くなる。
「あ、そうそう。もう護衛は巻かないで下さいね」
そう言い残し、彼は出て行ったんだけど。
「ええっ!? まだいるの、護衛!?」
私の放ったその声は、扉の向こうへと消えた鷹城さんに聞こえるはずもなく。
恐る恐る扉についた覗き穴をのぞいてみると、
「……いる……」
この前と同じ黒服の男達がふたり。
私は玄関扉の前で、『うーん』と頭を抱えてしまった。