明日、嫁に行きます!
それは、ただの気まぐれだった。
お祖母さんの嫁探しになど乗っかってやるつもりは毛頭ないが、一度くらいは便乗してやるのも悪くはないか。
そう思ったのだ。
自分に纏わり付く女など、基本、相手にはしない。
本気になどなられたら困るからだ。
けれどもし、大人な軽い遊びを理解してくれる都合のいい女が居たら、持って帰っても良いか。そんな風に軽く考えていた。
要するに、この苛々とした気分を紛らわせてくれる今夜の相手を探しに出ただけだった。
「総一郎さん!」
「鷹城社長!」
ホテルのロビーに姿を見せた途端、女達の目の色が変わる。それはまるで、獲物を見つけたハイエナのように浅ましく、僕の眸には映る。
鬱陶しいほどの秋波を送りながら走り寄る数人の女達を一瞥し、本日何度目かの嘆息が唇から漏れた。
結局は、僕の地位を求める女ばかりしか寄っては来ない。
ケバケバしく塗りたくられた猩猩緋《しょうじょうひ》の唇からは、意味のない美辞麗句が並べ立てられるばかりで。
いずれの言葉も心など籠もっておらず、僕の心は動かされなどしない。
どれを見ても同じだった。
彼女達に大きな違いなどはなく。
まあ、この中で一番後腐れのない女を適当に見繕えばいいか。
半ば投げやりな気持ちでそう思い、露骨に誘いかける肉感的な美女の肩を抱こうとした、その時だった。
―――ふいに、強い視線を感じたのは。
惹かれるように、僕は感じる視線の先を追った。