明日、嫁に行きます！

「話というのは、融資の件ですね」

　僕の言葉に寧音の母は頷いた。

「融資の条件内容ですけれども。鷹城さんは、寧音のことがお好きなのかしら？」

「ええ。仰る通りです」

「ふふふっ。かなり横暴ね。そういうの私、嫌いじゃないけど。でも寧音はあげない」

　悪戯に唇を綻ばせ、鋭さを滲ませた凜烈《りんれつ》な双眸で僕を貫く。

「それならば、申し訳ないですが、貴女から奪い去ります」

　彼女の双眸をひたと見据えて、僕はにっと嗤った。

「まあ情熱的。あの子のどこがそんなに気に入ったのかしら」

「……僕を全く眼中にも入れてくれない頑なさと、損得なく相手を思いやれる優しさ。そして、僕は寧音さんに昔救われました。パーティでも出会いが初めてではありません」

　人目を惹く珍しい容姿だから好きになったわけではないと過去の話も交えながら、僕は彼女に語った。

「ルネ・シルヴィー。確かに、私の娘ね。ふうん」

　顎に手を添えて視線を逸らせながら考える素振りを見せる彼女は、次の瞬間、挑むような双眸で僕を射た。

「ねえ。もし寧音が他の男と恋に堕ちたり結婚したいって言った場合、貴方はどうするの？」

　その言葉に全身が総毛立った。怒りに目の前が朱く染まる。
　そんなことさせるものか。許せるはずもない。
　殺意に似た感情が全身からうねるようにして溢れ出す。
　そんな僕の様子を、目を丸くしながら彼女は凝視していた。

　――――面白いわね、貴方。

　大きく双眼を見開いて、小声で呟く。