明日、嫁に行きます!
「ダメンズウォーカーなの寧音ちゃんって!」
ほとほと困り果て、何かいい案はないかと社長室に戻ってすぐに徹に聞いてみたのだが。
ウケるんですけど! 徹は手を叩いて爆笑している。
……僕はちっとも笑えない。
ソファに腰掛けながら、僕は煩悶を繰り返す。
そもそも、ダメな男ってなんだ?
どこからどこまでが彼女の許容範囲内なダメレベルなのか全く予測できない。
「ダメンズって言ったら恋愛対象としてダメな男って意味でしょ? 彼女に手ぇ挙げるDV男とかぁ、無職とか転職を繰り返す甲斐性なし、借金作りまくる男、女を頼るヒモ男、片付け下手で家がゴミ屋敷とか」
徹がいうどれもこれもが僕には該当しない。
苦渋に満ちた重いため息が漏れる。
「あ、片付けが下手って言う点に置いては合うか。吸い殻すらまともに捨てられないし。じゃあ、しゃちょーにはゴミ屋敷作戦ってのがいいかなー?」
「……僕の家はゴミ屋敷じゃない。家政婦を雇っている」
「だーかーらー。ひとりだったら間違いなく家荒れるだろー? 総兄は」
確かに。片付けなんて自発的には出来ない。しようとも思わない。そんな時間があるのなら、仕事を片付ける方を優先する。
だけれども。
「自分で荒らすようなことなどしない。現状維持は保っている」
「現状維持止まりがすでにもうダメっぽいし。総兄はゴミ屋敷ダメンズで良いんじゃね?」
名案だと徹は興奮した目を僕に向ける。
「明日休みだし、オレ、協力したげる! 題して、モデルハウスをゴミ屋敷へと改造計画!」
……そのまんまだ。ネーミングセンスの欠片もない。
得意満面な顔で迫られても何も言えない。
僕は面倒くさいその提案に、
「……もういい。勝手にしろ」
片手を振り、全て徹に丸投げしたのだが。
その言葉を僕は後で酷く後悔することになる。