明日、嫁に行きます!
「浩紀、固まってたわ。月曜から大学行けないじゃない。鷹城さんどうしてくれるの」
ハンドル捌きまで様になるイヤミな男に、私はむっつりとした顔で非難の声をあげる。
「真実を言ったまで」
一言でばっさり切り捨てられて、それのどこが真実なのだとムムムッと眉間に深い皺が刻まれてゆく。
「……私、貴方の嫁になるって了承してないんだけど」
「おや? いいんですか。ご家族が路頭に迷っても」
ぶすくれた私に、ニヤッと腹黒い笑みを浮かべながら非道な言葉を発する男に、頭が沸騰しそうになる。
「……脅迫すんの。外見通り性格悪いのね」
「貴女も。外見通り跳ねっ返りだ」
「私、誰にもそんなこと言われたことないわ」
いや、両親にはしょっちゅう言われているけれど。
あえてこの男を肯定することは言うまい。
癪だから。
「だったら、知ることが出来てよかったですね」
「あんたムカつくわ。あんな優しげなお婆さんの孫とは思えない」
根性悪な男を前に、私の中から年上の人間に対する尊敬とか丁寧な言葉遣いとかが全部ぶっとんだ。
「ああ、あの人、相当策士ですから。気をつけてくださいね」
策士? まさか。
あんな穏やかに微笑む人が、私の中の闇を一発で見抜いた人が、そんなはずないじゃない。
まるで親しい身内を貶されたような、嫌な気分になる。
「だいたい、あんたみたいに女に困ってなさそうな男が、なんで私なわけ?」
鷹城家の嫁になりたがる女なんて、掃いて捨てるほどいそうだ。
男前でお金持ちってだけで、女に不自由することはまずないだろう。
その証拠に、パーティー会場でも綺麗な女性達に囲まれたハーレム状態だったじゃない。
それなのに、なぜ?
そう思って、ハッと気付く。
思わず、あっと声を上げた。
お婆さん、言ってた。
孫は女性を信じられない。女性不信なんだって。