明日、嫁に行きます!

「ただ、貴女のそのすみれ色の瞳は、この上なく美しいと思います」

 その言葉に、ドキッとした。
 私が唯一、自分の中で美しいと思っているものだったから。
 母と、そしてフランスにいるお祖母ちゃんと同じ、珍しい藤の花の色。

「まるでアメジスト(紫水晶)のようです」

 そう言って、鷹城さんはにこりと笑った。

「……うっ」

 ……不覚だわ。今ちょっとドキッとしちゃったじゃない。

 熱くなる頬を誤魔化すように、手のひらでゴシゴシとこする。

「っていうか……ここ、どこよ」

 私はいつのまにか、知らない場所に連れてこられていた。
 ここは湾岸線の傍。
 少しだけ開いた窓からは、風に混じって潮の香りが漂ってくる。
 そして、目の前には、巨大なタワーマンションがデンとそびえ立っていた。
 てっきり自宅まで送ってくれるものとばかり思っていたんだけど、それは間違いだったようだ。

「僕のマンションですが」

 ――――それがなにか?

 そう堂々と言うものだから、呆気にとられてしまって次の言葉が出てこない。
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