明日、嫁に行きます!
パーティなんて行くんじゃなかった。
ベッドに寝転びため息を吐きながら、結局母に丸め込まれた感が否めない今の状況に、むしゃくしゃしたままふて寝を決め込む。
ブツブツと文句を垂れながら、私は事の発端である先週の出来事を思い返した。
あれは、関連会社の重役や父を含めた子会社・孫会社の社長たちを招いて行われた「内輪だけの」パーティだった。
「……これが内輪ってレベルなのか?」
私は会場である、認知度100パーセントな、知らない者はないだろうというセレブ感満載なホテルを呆然と見上げた。
吹き抜けになっている高い天井のエントランスには、綺麗にカッティングされたスワロフスキーなシャンデリアがキラキラと七色の光を放ち、その光を受けて、磨き上げられた白い大理石の床が艶やかに輝いている。
足元に敷かれたふかふかな赤い絨毯の先には、大きな明朝風の壺に溢れるほどの生花が色とりどりに飾られていた。
――――ホント、場違い。
ふうと小さく息を吐き、キョロキョロと辺りに視線を流す。
ロビーで父と待ち合わせをしていたのだが、生憎まだ父の姿は見えない。
暇だし、もう探検しちゃおうかな。こんなホテル、きっともう二度とこれないだろうし。
そう思い、私は座っていた猫足の椅子から立ち上がった。
沢山の人たちが、流れるようにして私を追い越してゆく。
会場入りする煌びやかに着飾った人たちを横目に、つい、自分の姿を確認してみた。
うん。まあ、大丈夫、かな。
母が選んでくれたこのドレスも決して安物ではないが、私の横を通り過ぎる人たちが身に纏う物とはケタが違うってことは、容易《たやす》く察せられる。
まあ、今日はおいしいモノ食べに来ただけだし。
さすがにタッパーを持って行こうとしたときには、父に止められてしまったけど。
美味しかったら5人いる妹弟たちにも持って帰ってあげようと思ったんだけどな。
もし、残ってしまうようならホテルの人に頼んで包んでもらおう。
そんなことを思っていると、ふいにあがった黄色い歓声に、私は引かれるように目を向けた。