明日、嫁に行きます!
「うわあ、本当に紫の瞳だ。話には聞いてたけど、紫の瞳の人間なんているんだねえ。昔、しゃちょーが言ってた天使様の話、オレ、今初めて信じる気になったよ」

 徹くんの言葉に、またも「は?」となる。
 天使様と鷹城さんが結びつかない。
 一体何のことを話してるのか。

 ……気になる。

「なにその天使様って」

「あ、そっか。ごめん、これもオレの独り言」

 パチッと調子よくウインクされて、私の目が胡乱に曇る。

 ……なんかムカムカしてきた。

 勝手に自己完結されても、私は消化不良でもやもやするんですけど。

「なに、なんの話してるの。教えてよ」

 むっつりと半眼で睨みながら、徹くんに尋ねるんだけど、

「えー言ったらオレ殺されちゃうかもー」

 うふふ、と不気味な微笑を返されて、プチッと切れた。

「ちょっと! 途中で話ブチ切られたら気持ち悪いじゃない、教えてよ!」

 ギリギリと徹くんのネクタイを締め上げながら、吐きやがれ! と問い詰める。
 このままじゃ気になって夜寝れないじゃない!

「うわっ、とんだじゃじゃ馬……痛い痛いごめんなさいーっ」

「寧音、放してやれ」

 空気を震わすようなバリトンの声に、私はビクッと飛び上がった。


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