明日、嫁に行きます!


 再び車に乗せられた私は、なるべく運転席に座る鷹城さんを見ないように意識しながら、前を走る車のテールランプを意味なくじっと眺めていた。
 だって、これ以上惑わされるわけにはいかないから。
 心の中の拳を高く掲げて気合いを入れ直す。

「寧音? なに難しい顔してるんですか」

 横から気遣わしげな声が降ってきたけれど、

「地顔ですからコレ」

 つんっと軽く受け流す。

「そう? 地顔はもっと元気で可愛らしいですよ」

「……か、かかわいいとか……聞き慣れてるしっ」

 ――――ちくしょーまた不意打ち。卑怯だ。

 婀娜っぽい目をしてミラー越しにこっちを見るな。
 分かってたけどこの男、一枚も二枚も上手だ。
 軽く受け流せないちくしょー。

「そう、その顔が良いんです」

 ――――恥ずかしがってる顔が可愛い。

 なんて、含み笑いをしながら婀娜めいた小声で囁くものだから、もう何も言い返せなくて。
 恥ずかしいやら悔しいやら、まるでいろんな色がごちゃ混ぜなパレットのように、気持ちを掻き乱されてしまって、ホントに困る。

 なんだこれ、なんなんだこれ。
 私、今までずっとクールキャラで通ってたのに。
 全然クール違うし今の私。
 鷹城さんに出逢ってから初めて味わう気持ちばかり。
 困惑に顔を赤くする私に、鷹城さんは楽しげにくつくつ喉を鳴らした。
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