明日、嫁に行きます!

「ああいうのが好みなのは、鷹城さんの方でしょ!」

 あ、また口が滑ってしまった。慌てて手のひらで口を覆い隠したんだけど。
 鷹城さんの周りの空気がまたもヒヤーッと冷たくなるのがわかって、ゾゾッと怖気上がる。

「……まだ言いますか。貴女は」

 ひたと私を捉える剣呑な眼差しに、全身がピキッと硬直する。

 ――――ヤバい! 怒らせた!

「う、嘘です! ゴメンナサイ!」

 平身低頭しおらしく、テーブルに頭が付くほどに深く頭を下げて謝ってみる。
 ちらりと鷹城さんをうかがうと、気が抜けたような顔で溜息を吐いていた。

「……全く。先に力ずくで僕のものにした方がよかったか」

 もの凄い小さなその囁き、うっかり聞こえちゃいました!
 うわっ、もの凄く怖っ!
 力ずくってそれ犯罪だよ!
 椅子の上でブルブル震える私に、鷹城さんは

「大丈夫。何もしません。……今はまだ」

 ……『今はまだ』って何? もしや、これから何かしようと企んでらっしゃる?
 いや待って、そんな満面の笑顔を向けられてもさらに怖さ倍増だから!

「で、さっきの話ですが、徹と何話してたんですか?」

 話を戻されてポカンとなるが、「あ! そういえば」と口を開いた。

「徹くんが言ってたんだけど、鷹城さんの天使ってなに?」

 私の言葉に、今度は鷹城さんが目を丸くする。そして次の瞬間、柳眉を逆立てて「あいつ!」と忌々しげに呟いたと思ったら、ハッと怒りの双眼を私に向けてきた。
 ビクッと身体を揺らす私を見て、鷹城さんはガックリと肩を落とし、魂が抜けてしまうほど大きな溜息を吐く。

「……昔、出逢ったんですよ。天使に」

 そのセリフに、私の目は点になった。
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