明日、嫁に行きます!
「ち、違うんだから。たた鷹城さんの勘違いなんだよ? 徹くんのことなんて冗談なんだから! ねっ? 本気で怒らないでよ? 私、ボーイズラブ的なこと想像なんてしてないから! 鷹城さんがゲイとかバイとか、全然思ってないし。鷹城さんノーマルだし、ねっ!」
ほら、こんなに鷹城さんが普通だってフォローしてるんだから、もう許して。大丈夫、私、こうみえて口が硬いんだから。そこまで隠したいなら絶対言わない。だから、怖い顔してこっち見ないでっ!
必死でフォローを入れて「ごめんなさい」を全身で表す私を見て、
「ふっ、はははっ」
鷹城さんは、いきなりテーブルに突っ伏して笑い出した。私は口を半開きにした間抜け面で、彼を凝視してしまう。
「寧音、貴女は本当に面白い人ですね」
面白いなんて評されたのは初めてだ。生意気だとかはよく言われるけれど。
「そ、それ、褒め言葉? ……そんなの、全然嬉しくないし」
爆笑する鷹城さんに、私の目が釘付けになってしまう。彼が楽しげに声を立てて笑う姿がなんだか新鮮で、目が離せなくて。そんな私を悟られまいと、つんっと唇を尖らせて生意気な態度をとってしまう。
ホントは、ただ容姿だけ見て綺麗だの美人だの言われるより、よっぽど好きな言葉だと思ったんだけど、そんなことは言わない。
なんか悔しかった。
意地っ張りな性格だから、裏腹な言葉で本音を誤魔化す。
「今すぐに、結婚してあげてもいいくらい僕は貴女を気に入ってます」
ギョッとした。
鷹城さんの冗談に、顔が赤く染まってゆくのが自分でも分かるくらいだった。
それにしても。
してあげてもいいって、上から目線なそのセリフ。鷹城さんはハーレムを築けるくらいモテるから、そんな居丈高な言葉が出るんだろうな。……今まで何人の女の人にそんな浮ついたセリフを言ったことやら。
そう思って、ムムッと眉間に深い皺が刻まれてゆく。
残念ですが、私は結婚なんてしてあげませんから。
私は『普通』がいいの。モテすぎたりイケメン過ぎる男の人は、本当にイヤ。全然タイプじゃないんだ。
鷹城さんは私の好みにあてはまらない。
それなのに。
何故か消えないイライラとした不可解な気持ちを抱えたまま、私はベーッと心の中で舌を出した。