明日、嫁に行きます!
「な、なんですって!?」
彼女の声にハッと顔を向けて、凍り付く。
私はリアルに鬼女を見た。
嫉妬に歪んだその顔は、それはもう筆舌に尽くし難いほど恐ろしげなものだった。
彼女の血走った目から逃れようと、私は鷹城さんの腕をふりほどき、目にも止まらぬ速さで彼の背後に身を隠した。
「僕は彼女に心底惚れてますので、もう二度と、僕たちの前に顔を見せないで下さい」
え―――ッ!
私は絶叫をあげそうになる。
そんなアホな!
火に油どころかジェットエンジン並みの燃料投下してどうするの!
大爆発起こすよ! ……大爆発、起こしてるよ、今めっちゃ睨まれてるよ、私!!
そんな私の抗議など知ったこっちゃない鷹城さんは、ビクビクと背後に隠れる私を振り返った。そして、甘さの滲む眸で、うっとりと私を見つめてきたんだ。
ひぃっ! わざとやってるな、この男!! だからそれが彼女の怒りを……ああっ、煽ってる煽ってるぅ―――ッ!!
恐々と怯えながらスーツの端っこを掴む私を見て、鷹城さんは満足げに微笑む。そして、浮かんだ笑みを消し、視線を高見沢さんへと戻した。
「もし、僕達の邪魔をしたら」
射殺しそうなほどの殺気を滲ませた眸で高見沢さんを一瞥し、彼女の耳元へと顔を寄せた鷹城さんは、
「―――貴女を殺します」
甘いバリトンに毒を乗せ、そう囁いた。