明日、嫁に行きます!
 こんなふうに冷たく対応してるうちに、彼は名残惜しそうな顔ですごすごと去ってしまった。

 男も女も外見ばかり気にする。
 親友だと思ってた女友達も、いや、かつての友達も、私を連れて歩くことで、寄ってくる男の一人を得ようと何度も私を利用した。それがイヤで誘いを断ったら、『ハデな顔で男引っかけて遊んでる淫乱女』なんて吹聴されて、総スカンを食らったことなんて数え切れない。信じては裏切られる。その繰り返しだった。
 男も一緒。自分の優越感を満たすためだけに私を連れまわす。

 そこに、私の意思はない。

 まるで、心のない人形を愛でるように私を扱う。
 私がイヤだと反抗すると、手のひらを返したように罵倒された。

『顔しか取り柄のない、不感症女のくせに逆らうんじゃねえ。言われた通り、足だけ開いてたら良いんだよ』

 思い出して吐き気がする。

 もう、うんざり。

 気分が悪いからもう帰る。そう父に伝えるため広間へと足を向けた時、ヨロヨロとふらつくお婆さんの姿が見えた。

 あ、あぶない……!

 歓声をあげながら走ってきた女の人に、お婆さんの身体がぶつかってしまって。
 とっさに駆け寄った私は、弾き飛ばされたお婆さんを抱き留めた。
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