明日、嫁に行きます!
「あのパーティーで、昔僕を救ってくれた少女、寧音を見つけました。そして、どうしても妻にしたいと望んだのです」
その言葉に、私は打ちのめされた。
そうか。そうだったんだ。だから鷹城さんは、私を妻に望んだんだ。
おかしいと思ってた。なんで私なのって。
私は俯いたまま、小さく嗤った。
よかったじゃない。それが私じゃなくて。想像を絶するほどの散らかし魔で包丁すらろくに持てない、そんなダメ男の傍から離れて、お役御免、さっさとここから出ていけばいいだけの話じゃない。
サラはきっと、鷹城さんのことが好きになるだろう。
付き合うなら、年上で頼りがいのある人がいいって言ってたから。
鷹城さんが昔出逢った少女。それは私じゃないって、彼にきちんと説明しなきゃ。そうして私が身を引けば、鷹城さんの望み通り、昔出逢った本物の天使と結ばれることが出来る。それが彼の望みなんだから。
その少女は私じゃなかったって、言えばいい。本物はサラで、私はニセモノなんだって。
でも、私は真実を伝えることが出来なかった。貝のように閉じた口は、胸の底で悲鳴を上げる心は、彼に伝えることを拒んでいた。
背後に立つ鷹城さんに、ふわりと抱き竦められる。
堪えきれない嗚咽がヒクッと喉を震わせた。
「寧音? なぜ……泣いているんですか?」
不安に揺れる鷹城さんの声に、ぎゅっと胸が掴まれる。
鷹城さんは、過去に出逢った少女が私だと思い違いをして、私を望んだんだ。
そのことがショックだった。
自分でもどうして良いか分からないほどの、強い衝撃を受けた。