明日、嫁に行きます!
ガバッと顔を上げた。
携帯を掴み、表示された時間を見てギョッとする。
「うそ13時って……」
学校、無断で休んじゃった。
着信履歴を見たら、浩紀からの着信が何回かあった。
はあっと溜息が零れる。
鷹城さんはもう仕事に行ったよね。
私はのそりと身体を起こした。
シャワー浴びて、……それからどうしよう。
重い足を引きずるようにして、私は浴室へと向かった。シャワーを浴び、そして、衣服を整えながら、そのまま自宅へ戻ろうと思い立つ。
鷹城さん、あれほど帰るなって言ってたけど、なんだか居づらくて。
とりあえず、気持ちが落ち着くまで離れた方がいいって思ったんだ。
玄関の扉を開けて、外に出ようとしたんだけど。
「斉藤寧音様ですね。どちらへ行かれるのですか?」
「……は?」
目の前には、黒のスーツを着たガタイのいい男がふたり、立っていた。
「あ、あの……どちら様、ですか?」
男達を見上げながら、ビクビクと口を開く。
「私達は、貴女の護衛を任された者です」
「へ? だ、誰に頼まれたの!?」
「鷹城様です」
驚愕に開いた口がふさがらない。
彼は一体何をしたいのか。疑問が口から飛び出そうになる。
「あ、あの、買い物に行きたいんだけど」
家に帰りたいと言ったら問答無用でダメと言われそうなので、当たり障りのないことを言ってみる。
けれど、
「鷹城様から外には出すなと言われてますので」
すいませんと頭を下げられてしまう。
これでは護衛と言うよりも見張りといった方が正しいのではないかと、文句の言葉が口から出そうになる。喉まで上がってきた文句を、ゴクリと飲み下して耐えた。
「鷹城さんに言われてるの。今から行かなきゃ、彼が帰ってくる時間に間に合わない」
なんて、へらりと引き攣り笑いを浮かべながら言ってみるんだけど。
「申し訳ありませんが」
無理です。と返された。
私はムッと彼らを睨んだ。
「じゃあ、貴方たちがついてきてくれたらいいんじゃないの」
絶対巻いてやると、心の中で舌を出しながら提案してみる。
ふたりは顔を見合わせた。そして、ひとりが携帯を取りだしたのを見て、私は焦った。
「あ! 鷹城さんには私からメールしたから大丈夫。護衛がふたりもついているんだから問題ないでしょ!?」
ねっねっ、と必死になって掻き口説く。
「わかりました。私達も同伴します」
溜息交じりな彼らの言葉に、私はホッと胸をなで下ろした。