明日、嫁に行きます!
私は近所にあるスーパーへと、大柄な黒服男を二人も従えて入るハメになった。
なんか、妙に注目を集めているのがイヤ。皆見て見ぬふりをしているのが分かって、ホントにイヤ。
カートに、これでもかというほど商品を入れてゆく。
支払いは鷹城さん持ちだ。
こんな恥ずかしい思いをさせられたんだから、それぐらいは大目に見て欲しいと独りごちる。
精算時、以前彼から渡されていたクレジットカードを提示する。
この黒いカードを渡された時は真面目にビビった。
いらないと一度は断ったものの、必要経費はここから出せと、結局押しつけられてしまったのだ。
食料品とか日用品など必要最低限のものを揃える以外に使ったことはなかったけれど、今日はお構いなしに買い込んだ。
重たい瓶類などわざと買い込み、結果、ただの買い物にしてはあり得ない重量になっていた。
そして、その大量の荷物を彼らに「はい持って」と渡して、自分は手ぶらでマンションまでの大通りを悠々と歩いてゆく。
彼らの両手は今、完全に塞がっている。
しかも、めちゃくちゃ重たいはず。
彼らの足は確実に行きより遅くなっている。
私はほくそ笑んだ。
彼らを案じるように見せかけて、後ろをちらちらと確認する。
背後から一台のタクシーがやって来るのが見えた。
――――チャンス!
私は靴紐を結ぶフリをしてしゃがみ込み、彼らを先に行かせて――――素早く手を挙げタクシーを止めると、急いで乗り込んだ。
「早く早く! ドア閉めて!」
扉が閉まるのを確認して、ガラス越しに彼らを振り返った。
扉をバンバン叩く彼らを置いて車は走り出す。
荷物を地面に落として焦りまくる彼らに、私はベーッと舌を出した。
タクシーのシートに深く腰掛け、肺の中の空気を全部外へ出すほどに深い息をつく。
それにしても。鷹城さんは何を考えているのか。
なんのつもりで、あんな護衛だか見張りだかを私に付けたのか。
そんなに信用ならないのかと、怒りと悲しみの感情が胸の中でごちゃ混ぜになる。
「家に帰って……ゆっくり考えたい」
疲れた声でポツリと呟く。
タクシーの窓から流れるビル群を眺めながら、私は今後のことに思いを馳せた。