毛糸玉


「源さんっ‥」

着物をつかんで思わず声を上げると、
彼は首を傾げる


「ちゃんと聞こえてる。
ずっと君を見ていただけ。

不安に思うことはないよ‥」


そういうと顔を下げてきて、
私の額に口づけをした。


「‥‥っ」

私が思わず目をつむると、
すぐ近くでクスクスと笑う彼の声が聞こえた


「目を開けて」

「‥や、やだっ‥!」

思わずそう答えてしまった。

目をぎゅっと瞑る

が、
耳に冷たいモノが触れる感触がした。


「な‥なにっ」


それはまるで生きているかのように私の耳を這っているかのように動く


そして、
甘い妖淫な音が聞こえてくる


それが舌だと気づいた時には遅くって、


「げ‥んっ‥‥さっ‥!」


目を開けても遅くってただ彼はいやらしい音をたてて私の耳を犯すだけだった


熱い熱い感情がこみあげてきて、思わず彼の肩を掴んでだいてしまう。



「‥あっ‥」


「もっと聞かせて‥」

私の一番弱い声

そんな声で、
そんな瞳で言われてしまったら‥


「あぁっ‥」


声が抑えられなかった。

私はもう、はまってしまった。

二度と抜け出せない。
頭の何処かではわかってた。
けれどもう‥


沼のような彼からは二度と抜け出せないのだと、そう思った



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