キスシリーズ~不器用キス~短編
「優?」
「へ?あっ何?」
「だから、なにかあったらあたしたちに言いなよって言ったの!」
パチッとウィンクする茜に私は「ありがと」と笑顔を返した。
「優を泣かす男がいたら私が懲らしめてあげるわ」
ニコッと笑ってそう言う鈴ちゃんに私は苦笑いする。
私が春ちゃんのことで泣いたら鈴ちゃんすごいだろうなぁ。
そんなことを考えてたらチャイムがなって先生が教室に入ってきた。
それと同時にみんなが席につく。
私の席は一番後ろの窓側の席で、窓の外を見れば、グラウンドで走ってる春ちゃんの姿が見えた。
体育の授業かな?
グラウンドを一周すると春ちゃんは止まってみんなと一緒に並び始めた。
こんな所からでも春ちゃんを見つけることができる私ってどれだけ好きなのって感じだよね…。
私はふーっと一つため息をつくと、先生のほうに顔をむけて一切春ちゃんのほうを見なかった。
だってこれ以上見てしまったら、春ちゃんしか目に入らなくて先生のはなしとか授業に集中できなくなっちゃいそうだったから…。
春ちゃんをみてるとキュウーッて苦しくなっちゃうんだ。
春ちゃんに見つめられると、頬が熱くなって大変なんだ。
それで、春ちゃんに頭を撫でられたらドキドキして、苦しくなるんだよ。
だって今でさえ、キュウーってなって苦しいもん。
でも、この気持ちは嬉しいものなんだって分かる。
こんなにも好きなんだって思っちゃう。
春ちゃんが大好き。
この気持ちは春ちゃんが教えてくれた。
だから大切にしたい。
「春ちゃん…」
ボソッと私は小さく誰にも聞こえないように呟いた。