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「意地悪なこと言ったよね。馬鹿とか」
「それは……うん、ごめんね」
恨みがましく私が言うと、貴一さんはへらりと笑う。その声だけで、もうどうでも良くなる私ってやっぱり馬鹿。
「そういえばお酒、結構呑んでたみたいだね」
「まあね」
「もしかしてやけ酒?」
「違うよ」
そこは否定するんだ。
じゃあなんでこんなに呑んでたの?と尋ねると、貴一さんはやっと顔を上げた。
至近距離で、実に恨めしそうな顔をしてた。
「奈々ちゃんを、」
「えっ」
「奈々ちゃんを呼ぶ口実考えてた」
じっと見つめてそう告げられる。
なにこれ、やばい。
こんな不意打ちで。
「あーもぅっ、きーちさんのばーか、ばーか、ばーっか!」
来なくて言いなんて言うくせに、自分はこんなになるまでお酒呑んで口実考えるとか。
私も馬鹿だけど、
貴一さんだって大馬鹿だ。