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カレーを食べて、一緒に食器を洗って、そのあとふたりでバルコニーに出て夕陽を見た。

風が強くて寒かったけど、貴一さんの部屋から見える夕陽は本当に綺麗でいつまでも見ていたかった。
オレンジ色の光があったかくて眩しくて、なんだかとっても懐かしい気持ちになる。



「貴一さんの地元の夕陽もこんな風に綺麗だったよね」


思わずそんなことを口にする。

ちゃんと見てきたわけじゃなかったけれど、貴一さんちの窓の外から見た夕陽の景色はとても綺麗だった。鮮やかなオレンジ色が雪に反射してキラキラしてた。

思い出しても胸がじんとなる。



「前に言ってた夕陽が綺麗だからこの部屋に住むのを決めたって話、今ならなんだかわかる気がする」

「嬉しいこと言うね」


貴一さんがそう言ってくしゃりと笑う。




(あ、この笑顔好きだな)


そんなことを思って、きゅんとなる。
そして無性に恥ずかしくなって、誤魔化すように視線を彷徨わせた。



「あっ!ねぇ貴一さん、あれなぁに!?」


話題を変えるように言って指差したのは、チョコレート色の街並のなかで少し不自然に長くそびえ立つ煙突だった。



「あれは銭湯の煙突だよ」

「銭湯って、あの銭湯……?」


あの銭湯以外にどの銭湯があるのか。
聞き返してしまった言葉はちょっぴりアホっぽい。
でもだってびっくりして思わず言ってしまったんだから仕方ない。

銭湯なんて生まれてこの方経験したことないし。



「そう銭湯。お風呂屋さんだよ。……もしかして、行ったことない?」

「ないない!ドラマとか映画の中だけでしか見たことない」


私がそう興奮気味に話すと貴一さんもやや驚いた様子。銭湯に行ったことないってやっぱり年上の貴一さんからしたら珍しいのかな。



「じゃあ行ってみる?」

「行く行く!!」


提案されてこくこく頷く。

すると貴一さんもにこりと笑った。


「じゃ、今夜はお泊まり決定だね」


「はぅっ!?」


貴一さんにいたずらっぽく言いわれて、はっとなる。

あぁ、しまった。
まんまと罠にかかってしまった。



やっぱり貴一さんは狡い大人だ。

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