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ドクンドクンと、心臓が嫌な風に高鳴ってしまう。
そんな私の気持ちなんて御構い無しにテーブルの上ではスマホが鳴り止まない。
(貴一さんに持ってた方がいいのかな?でもお部屋開けちゃいけないし……)
そう軽く悩んだけれど、私は腹を括って立ち上がった。鳴り続ける貴一さんのスマホを引っ掴んで。
「きーちさーん、電話鳴ってるよー」
扉越しにそう声を掛けると、部屋の中から「ほっといていいよ」なんて返事がきた。
ほっといていいだなんて。こっちは電話が鳴る度に寿命が縮まる思いなのに。
「ずっと鳴ってるから気になるのっ!
なんなら、あたしが出ようか?松嶋やよいさんに」
貴一さんの無神経な言い方になんだか無性にカチンときて、わざとそんな意地悪なことを言ってしまう。
「やよいっ!?駄目駄目出たらっ!!」
すると貴一さんはそう言いながら慌てて部屋から飛び出してきた。その顔はすごく焦っていた。
それと同時に手の中のスマホも震えが収まってしまった。どうやら相手も諦めたみたい。
「電話止んじゃった」
「そう……」
電話が止んでるとわかると、貴一さんは脱力したみたいにはぁっと深い溜息を零す。そんなに焦る相手ってなんなのさ。
心の中は相変わらずモヤモヤ。
「あ、ていうか貴一さん、お部屋……」
「あ……」
勢いよく開けたまま、開けっ放しだし。
丸見えなわけで……。
「全然散らかってないじゃん。むしろ綺麗だよ」
何気なくそう感想を零す。
貴一さんちの寝室はとても広くて、大きなベットが収まってて、それでもまだまだ余裕があるほどだった。
パソコンとかテレビとかゲーム機とかラックとか小さめなソファとかも置いてあって、寝室に趣味部屋を兼ねてるみたい。
散らかってるわけじゃなくてむしろ綺麗だった。
「奈々ちゃん、引いてない?」
「なにが?」
「その……、ゲーム系が……」
貴一さんが恐る恐るという風に呟く。
ゲーム系と言われれば、確かにゲーム機とたぶんゲームソフトみたいなのはちょっと、いやかなり多いみたい……。
大きなラックにはゲームソフトがびっしり。
そのなかで半分くらいすっぽり抜けてるところがあるから、たぶんそこにあったのは貴一さんがすでにどこかに隠したんだと思うけど……。
「今更ですよ、あたし貴一さんゲーマーなの知ってるし。それに、ここは貴一さんの家だし個人の趣味なんだから引いたりしませんよ」
そう答える。
というか、パンツやエロ本なんかより全然ましだった。
「ほんと?引いてない?」
「ないない」
「百年の恋も冷めるとか、ない?」
「なにそれ」
おじさんの口から百年の恋とか、可笑しくて思わず笑ってしまう。
すると笑ってる私を見て貴一さんも安心したようにへらりと笑った。
もしかして貴一さんの歴代彼女は、ゲーマーなのに幻滅して別れたのかな。百年の恋も冷める〜とか言って。
だとしたら貴一さん女運無いな。
人の趣味に口出しするなんてろくでもない人達だ。
(別の意味でろくでもないのは私も同じだけど)