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三学期

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冬休みが終わり、3学期が始まった。

放課後。
保健室にあるだるまストーブを目当てに森川先生のもとを訪れる。


「いやぁ〜、歩美さんのご両親に結婚許してもらえて良かったですなぁ〜、森川センセ！」

「大人をからかうな」


ストーブに暖まりながら私はさっそくにまにましながらお正月のことを森川先生に茶化す。すると先生はむすっと不機嫌ぽく返した。


「相沢こそどうなんだ？」

「どうって？」

「おっさ……古川さんと……」

「今明らかに貴一さんのことおっさんて言おうとしたよね」


歩美さんの上司でもあるから、流石にもうおっさん呼ばわりは出来ないみたいだけど。


「うるさい。誤魔化すなよ」

私のツッコミに先生は大人気なく怒る。
問いかけを誤魔化そうしてたのがばれて私はへらっと笑う事しか出来なかった。



「いやぁ〜、どうでしょうね」

「どうでしょうねって、お前なぁ……」


呆れたような先生の顔。
私は先生の視線から逃げるようにストーブの前にしゃがみこんだ。

オレンジ色の火がゆらゆらしてる。
冷え切った手をかざすと、手のひらがじんわり暖かくなる。

ストーブの、灯油の独特の匂いがなんだか懐かしく思えた。



「あ、これ沸騰してるんじゃない？」


話をそらすように先生に言う。

ストーブの上に置かれたヤカンの蓋がカタカタ揺れている。なかは沸騰しているみたいで、グツグツと音が聞こえる。


「コーヒーでも淹れるか？」

「うん。あ！あたしミルクないと飲めない」

「はいはい」



紅茶も好きだけど、コーヒーも最近ちょっとずつ飲める様になってきた。たぶんこれはコーヒー好きの貴一さんの影響。ブラックだけは未だに飲めないけど。


先生にリクエストするとちゃんとミルクがたっぷり入ったカフェオレが出てきた。

ほかほかあったかい。


「先生はブラック？」

「ああ」

「苦くない？」

「慣れると美味いよ」

「……ふーん、慣れるものなの？」

「大人になったらな」


大人になったらと、先生は言った。

貴一さんとのキスを思い出した。