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「……さて、ここからが本題」

「……へっ?」


よしよしと、泣いてる私の頭を撫でて慰めながら仁さんがにっこり笑ってそう切り出した。
その爽やかな、けれど危険なその笑顔に、私はびっくりして涙が止まる。


目をぱちくりと見開く私に、仁さんがにっこり笑ってこう言った。



「さっきも言った通り、僕は君が欲しいんだ。

如月の血を引いてない僕だと、一族の中では立場も危うくてね」

「だからって、あたしになにが出来るって言うんですか……」

「そうだね、僕の代わりに社長にでもなって貰おうかなぁ」

「はぁっ!?」

「実際に会社動かすのは僕だから安心して」

「できるかぁっ!!!!」



あまりに突拍子もない話に、盛大に声を上げてツッコミを入れた。

かこーん と、また鹿おどしの音がタイミング良く遠くから聞こえた。



「なんで、あたしがそんなことっ!!それに、せっかくママがあたしを如月の家の問題に巻き込まないようにしてくれてたのに、今更巻き込もうとするんですかっ!!」

「仕方ないだろう?そうでもしないと、お祖父様の会社が潰れちゃうんだから」


怒る私に仁さんがさらりとそう返した。
潰れるって、お父さんの会社が。



「うそっ」

「本当だよ。うちの父が会長を退いてから、社長が代わってね。

お祖父様の甥なんだけど……これが、まぁ、なんと言うか……金遣いの荒さと傲慢な態度意外取り柄のない使えない男なんだよ」

「そんな……」

「その点、僕は優秀だよ。足りないのは如月の血だけさ」


にこりと、仁さんが極上の笑みを向ける。私はびくりと思わず体を竦めた。




「気の毒なことを頼んでるのは自覚しているさ。けど、君は良い子だから信頼出来るし……なにより、僕が気に入っちゃったから」

ごめんね。と、笑顔の仁さんが首をこくんと傾げる。



「そん、な、こと、言われたって……」

「大丈夫。悪いようにはしないし。高校卒業してからで良いから」

「いや、そうじゃなくて……っ」


「卒業までの間に、勉強いっぱいしておいてね?

学校の授業はもちろん、英語とか中国語とか話せるように、あと経済についても学んでおいた方がいいなぁ……。

奈々子ちゃんは賢そうだからお飾りの社長にするのは勿体無いしね」

「いやいやいやっ!!困りますっ!!」


勉強しておいてね、じゃないよ。
なにこの迷惑な人。



「まずは三学期の成績を上げようね」

「〜〜っ!?」


人の話全く聞いてないし。

あまりのことに唖然とする私に、ぱちんとウィンクが飛んできた。



かこーん と、

鹿おどしの音がまた遠くで聞こえた。


-January-


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