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■ □ ■ □


連れてこられた先は、
街中にある煌びやかなブティック。


貴一さんが慣れた様子でドアを開け、私を中へと促した。恐る恐る一歩を踏み入れた先は、まさに未知の領域。


金ピカのフロアに、
キラキラのシャンデリア。

店内全てがキラキラしてて、ゴージャスで、なんだか目が眩みそうになった。


「あ〜ら、貴一くん。おひさしぶり〜」


そう言って貴一さんに声をかけたのは、背の高い綺麗なお姉さん。慣れた風に貴一さんの肩にタッチして、そのまま挨拶みたいに頬にキスをした。

それがあまりにも自然な動作だったから、私はびっくりして目を見開いた。

(貴一さん、普通にキスされてるっ!?まさか、貴一さんの彼女!?それとも大人はこんなこと挨拶代りに普通にできちゃうのっ!?)


そう内心で焦る私を余所に、お姉さんと貴一さんはなにやら親しそうにしていて。



「まぁ〜、今日は随分と可愛い子連れてるじゃないっ!!」

そう声を上げたかと思えば。
お姉さんは貴一さんから離れ、素早く私をむぎゅっと抱きしめた。



「うぐっ!?」

「可愛いわぁ〜!食べちゃいたい」


「こら、剛士ちゃん。離れて」

「あんっ!」


危うくおっぱいで窒息死するところだった。貴一さんがすぐ引き離してくれたからなんとか無事だけど。


「奈々ちゃん、大丈夫?」

「う、うん……」


(……ていうか貴一さん今このお姉さんのこと、たけしって呼んだ?)

お姉さんの顔と名前が一致しなくて不思議に思っていると、貴一さんはへらっと笑ってこう言った。



「コレね、こんなナリしてるけど男なんだよ」

「え……っ!?」

「コレとか言わないで頂戴!!アタシにはイザベラって名前があるんだからっ!!」

「本名、剛士でしょ」

「いやぁぁぁっ!!その名前で呼ばないでぇっ!!」



どうやら、お姉さんだと思ってたこの人は、オネエさんだったらしく。

確かに言われてみれば、声はちょっと低めで、体つきは男の人みたいにがっしりしてる。ヒールがプラスされてるにしても身長はかなり高い方だ。


でも、言われるまで本当に女の人かと思った。

爪は綺麗なネイルが施されていて、髪もくるくるに巻いてて、顔立ちもすごく美人さんだから。それにおっぱいあるし。




オネエさんことイザベラさん(本名:剛士さん)は、この高級ブティックのオーナー兼洋服のデザイナーらしい。


「剛士ちゃん、この子に服一式揃えてくれる?」

「オッケー!」

「はっ!?え、ちょっ」


貴一さんが言うと、イザベラさんが私の腕をがっしりと掴んだ。
戸惑う私にも御構い無しに、そのままずるずるとお店の奥に引きずられてしまったわけで……。


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