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「なゆたんはね、今はニューヨークにあるウチの支店で働いてるのよん」
「ニューヨーク!?」
なにそれ、もっとすごい。
海外で仕事とか、子どもの私にはまだ考えられない。
こんな素敵なお洋服のデザインも出来て、さらには日本から遠く離れた海外で働いていて……。
「那由多さんてやっぱりすごいんだね」
「うん。我が弟ながら、センス良いよね」
嬉しそうに貴一さんがそう呟く。
その表情に私もきゅんとときめく。
(貴一さん、那由多さんの活躍が嬉しんだね)
そんなことを思って、私も嬉しくなる。
そうしてほっこりした気分に浸っていると、ふいに貴一さんの手が私の背中に伸びた。
「ココとかさ、エロくていいよねー」
「ひゃっ!?」
言いながら貴一さんが触っているのは、ワンピースの背中のリボン。
「このリボンさ、解きたくなるよね」
「きゃっ!触っちゃだめっ!!」
焦る私にも御構い無しに、貴一さんがリボンの端を弄びながらそんな怪しげなことを言い出した。
このワンピースは肩から背中にかけての部分がちょっと広めに開いていて、ファスナーの代りに大きなリボンが編み込まれていて結んである。
だから、このリボンを解かれるとワンピースは簡単に脱げてしまうわけで……。
(このっ、エロおやじっ!!)
こっちは素直にほっこりしてたのに。なにエロいこと考えてるんだ。
恥ずかしさと怒りできっと睨みつけるけど、貴一さんは相変わらずのへらっとした表情。睨みつけても全く動じてくれない。
それどころか、
「ねぇ、奈々ちゃん」
へらっと笑ったまま顔を寄せられて。
「レストランはやめて、先にホテル行こっか?」
なんてことを言い出されてしまって。
キスができちゃうくらいの近い距離で囁かれ、夜の匂いを纏ったその甘い吐息にくらっときちゃいそうになった……。
「ーーっ、いきませんっ!!」
そう顔を真っ赤にして言い返すだけで精一杯。そんな反応でさえ、貴一さんには面白いようで、「えー、残念だなぁ」なんて言って笑ってる。
そんなやりとりに、「はいはい貴一くん、可愛いフィアンセにオイタしちゃ駄目よ?」と、イザベラさんが間に入って助けてくれた。