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後日
■ □ ■ □
「立ち直り早いな、お前」
「いやぁ、これでもすんごい泣いたんですよぉー」
バレンタイン翌日の、学校の保健室。
ブラックのコーヒーを飲む私の姿を見て、森川先生は苦い顔をした。
先生は、貴一さんとダメになったことをすでに知っていた。きっと歩美さん経由で聞いたんだと思う。貴一さんが結婚すると。
多分、慰める意味も込めて私に温かいコーヒーを淹れてくれたのだけれど。私はそれを砂糖もミルクも入れずに口をつけた。
先生の淹れるコーヒーは自分で淹れるのより美味しかった。
「もっと落ち込んでるかと思ったよ」
「だからー、こう見えてもすっごい落ち込んでますよー」
失敬なと、私は先生に文句を言う。
やけに元気な私が意外だったんだと思うけど。これでも無理して学校に来たわけで。
泣き腫らした目はまだ痛いし、熱はまだ少し高い。しかも昨晩は夜更かししたから、まだ午前の授業が終わっただけなのに体はもうくたくた。
「ねぇ先生、午後の授業休ませてー」
「失恋にかこつけて授業休むな」
「先生のいけずー。なによ、自分は歩美さんとラブラブバレンタインだったからってぇー!」
「うるさいっ!こっちはそれどころじゃなかったってのにっ!!」
そうムキになって言い返す先生の言葉に私はきょとんとなった。
「それどころって……?」
そう思わず尋ねてみると、先生はあからさまに「しまった」という顔をして口元を抑えた。
明らかに私になにか隠してるみたいな……。
「……なんでもない」
「なにかあるんだね」
確信を込めてそう言い返すと、先生の視線が横にそれた。
「……べつに、言わなくても良いけどぉ」
「嘘つけ。聞きたそうな顔しやがって」
先生があからさまな溜息を一つ零した。
それからなにか諦めたみたいに事情を話し出した。
「歩美な、今実家に戻ってるんだよ」
「やだっ、先生なにしちゃったの!?愛想尽かされたのっ!?」
「そんなわけあるかっ!……家の都合でだよ」
先生がそう言ってまた溜息を零した。
歩美さんが実家に帰っているのは、お家の都合。
歩美さんの家……高坂家は、貴一さんの古川の家とも繋がりがあるわけで。だとしたら家の都合って、まさか貴一さんの結婚ともなにか関係があるのかな。
(そういえば、那由多さんも今日本に戻って来てるって言ってたよね……)
「立ち直り早いな、お前」
「いやぁ、これでもすんごい泣いたんですよぉー」
バレンタイン翌日の、学校の保健室。
ブラックのコーヒーを飲む私の姿を見て、森川先生は苦い顔をした。
先生は、貴一さんとダメになったことをすでに知っていた。きっと歩美さん経由で聞いたんだと思う。貴一さんが結婚すると。
多分、慰める意味も込めて私に温かいコーヒーを淹れてくれたのだけれど。私はそれを砂糖もミルクも入れずに口をつけた。
先生の淹れるコーヒーは自分で淹れるのより美味しかった。
「もっと落ち込んでるかと思ったよ」
「だからー、こう見えてもすっごい落ち込んでますよー」
失敬なと、私は先生に文句を言う。
やけに元気な私が意外だったんだと思うけど。これでも無理して学校に来たわけで。
泣き腫らした目はまだ痛いし、熱はまだ少し高い。しかも昨晩は夜更かししたから、まだ午前の授業が終わっただけなのに体はもうくたくた。
「ねぇ先生、午後の授業休ませてー」
「失恋にかこつけて授業休むな」
「先生のいけずー。なによ、自分は歩美さんとラブラブバレンタインだったからってぇー!」
「うるさいっ!こっちはそれどころじゃなかったってのにっ!!」
そうムキになって言い返す先生の言葉に私はきょとんとなった。
「それどころって……?」
そう思わず尋ねてみると、先生はあからさまに「しまった」という顔をして口元を抑えた。
明らかに私になにか隠してるみたいな……。
「……なんでもない」
「なにかあるんだね」
確信を込めてそう言い返すと、先生の視線が横にそれた。
「……べつに、言わなくても良いけどぉ」
「嘘つけ。聞きたそうな顔しやがって」
先生があからさまな溜息を一つ零した。
それからなにか諦めたみたいに事情を話し出した。
「歩美な、今実家に戻ってるんだよ」
「やだっ、先生なにしちゃったの!?愛想尽かされたのっ!?」
「そんなわけあるかっ!……家の都合でだよ」
先生がそう言ってまた溜息を零した。
歩美さんが実家に帰っているのは、お家の都合。
歩美さんの家……高坂家は、貴一さんの古川の家とも繋がりがあるわけで。だとしたら家の都合って、まさか貴一さんの結婚ともなにか関係があるのかな。
(そういえば、那由多さんも今日本に戻って来てるって言ってたよね……)