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■ □ ■ □
午後の授業は休まず全て出席して、真面目に授業を受けた。とっても真面目にだ。
これが本来あるべき学生の姿なんだろうけど、のらりくらりとこれまで適当に生きてきた私には疲れる作業だった。
(良い女への道も楽じゃないのね……)
放課後。
疲れてぺたんと机に突っ伏すと、澪が心配そうに私に声を掛けた。
「奈々子ちゃん、大丈夫……?」
「だいじょーぶ!全然へーきだよ」
へらっと笑ってそう返すけど、それでも澪は心配そうな表情のままだった。
(まぁ、昨日の今日じゃ仕方ないかな……)
昨日は澪にはたくさん心配も迷惑も掛けちゃったわけで。
「ね、奈々子ちゃん。今日は一緒に帰ろう」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど……、あんまり陸をほったらかしたら駄目だよ」
澪の気遣いは嬉しいけれど、彼氏の陸に申し訳なくてそう答えてしまう。だって、昨日のバレンタインだって放課後は澪を独占してしまったのだから。
「じゃ、一緒に帰る?」
そうひょいっと私と澪の会話に飛び込んできたのは、他でもない澪の彼氏の陸自身だった。
「3人で帰ろうか?」
「結構!失恋したばっかなのに、なんでラブラブカップルと一緒に下校しなきゃいけないのよ!」
「えっ、なに失恋したの?」
思わず言い返すと、陸がきょとんとした顔で聞いてきた。
(しまったっ!陸には絶対知られたくなかったのに……っ!!)
貴一さんと仲良い陸にはこのことを知られるわけにはいかない。うろたえる私に、澪も隣でおろおろ。
追求されると非常に不味い状況だ。
「ふーん、まぁいいけど……」
陸はなにやら意味あり気な目で私を見たけど、それ以上はなにも聞いてこなかった。
……しかし、その直後。
とんでもない爆弾をぶっこんできた。
「そういえば、傘どうする?」
「かさ?」
「貴一さんが奈々子の傘預かってるって言ってたけど」
「ーーっ!?」
……そうだ。そうだった。
昨日、貴一さんの車に傘を忘れてしまったんだった。お気に入りだったけど、もう会っちゃいけないから完璧に諦めていた。
まさか陸から言い出されるなんて思ってもみなかったわけで。
「……すっ、捨てていいよって言っといて」
なるべく平静を装ってそう答える。
声は若干裏返ってしまったけれど。
「捨てるの?良いんだ、本当に?」
じいっと陸が私を見つめて聞き返す。
そのまっすぐな視線になんだか居た堪れなくなる。
「……もう要らないから、良いの」
へらっと笑ってそう言ってみる。
だって取りに行く勇気は無いから。
午後の授業は休まず全て出席して、真面目に授業を受けた。とっても真面目にだ。
これが本来あるべき学生の姿なんだろうけど、のらりくらりとこれまで適当に生きてきた私には疲れる作業だった。
(良い女への道も楽じゃないのね……)
放課後。
疲れてぺたんと机に突っ伏すと、澪が心配そうに私に声を掛けた。
「奈々子ちゃん、大丈夫……?」
「だいじょーぶ!全然へーきだよ」
へらっと笑ってそう返すけど、それでも澪は心配そうな表情のままだった。
(まぁ、昨日の今日じゃ仕方ないかな……)
昨日は澪にはたくさん心配も迷惑も掛けちゃったわけで。
「ね、奈々子ちゃん。今日は一緒に帰ろう」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど……、あんまり陸をほったらかしたら駄目だよ」
澪の気遣いは嬉しいけれど、彼氏の陸に申し訳なくてそう答えてしまう。だって、昨日のバレンタインだって放課後は澪を独占してしまったのだから。
「じゃ、一緒に帰る?」
そうひょいっと私と澪の会話に飛び込んできたのは、他でもない澪の彼氏の陸自身だった。
「3人で帰ろうか?」
「結構!失恋したばっかなのに、なんでラブラブカップルと一緒に下校しなきゃいけないのよ!」
「えっ、なに失恋したの?」
思わず言い返すと、陸がきょとんとした顔で聞いてきた。
(しまったっ!陸には絶対知られたくなかったのに……っ!!)
貴一さんと仲良い陸にはこのことを知られるわけにはいかない。うろたえる私に、澪も隣でおろおろ。
追求されると非常に不味い状況だ。
「ふーん、まぁいいけど……」
陸はなにやら意味あり気な目で私を見たけど、それ以上はなにも聞いてこなかった。
……しかし、その直後。
とんでもない爆弾をぶっこんできた。
「そういえば、傘どうする?」
「かさ?」
「貴一さんが奈々子の傘預かってるって言ってたけど」
「ーーっ!?」
……そうだ。そうだった。
昨日、貴一さんの車に傘を忘れてしまったんだった。お気に入りだったけど、もう会っちゃいけないから完璧に諦めていた。
まさか陸から言い出されるなんて思ってもみなかったわけで。
「……すっ、捨てていいよって言っといて」
なるべく平静を装ってそう答える。
声は若干裏返ってしまったけれど。
「捨てるの?良いんだ、本当に?」
じいっと陸が私を見つめて聞き返す。
そのまっすぐな視線になんだか居た堪れなくなる。
「……もう要らないから、良いの」
へらっと笑ってそう言ってみる。
だって取りに行く勇気は無いから。