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「で?陸はいつから知ってたの?」
「なにを?」
「だから、その……、あたしが貴一さんのこと、好きだってことをっ!!」
結局3人で帰ることになったその帰り道で、私は恥ずかしながらも陸に尋ねてみた。
絶対バレてないと思ったのに、どうしてバレてたんだろう。
「んー……、最初から?なんとなくそうだと思ってた」
「さっ、最初っからっ!?」
なにそれ、めちゃくちゃ恥ずかしすぎる。
確かに貴一さん本人にもすぐバレちゃうくらいに私の好意はだだ漏れだったわけだけど。
「……けど、澪に言われるまで2人がかなり親しいことになってることには気付かなかった」
「ん?澪に?」
澪に言われるまでって。
どうゆうこと?
澪には昨日初めて打ち明けた話なのに……。
陸の言葉にそう疑問を浮かべる私に、隣を歩く澪が恐る恐るという風にこう呟いた。
「私ね、本当は奈々子ちゃんが古川さんのこと好きなの前から知ってたの」
「えーっ!?」
(なんでっ!?どうして澪までっ!?)
どこ情報よそれっ!!
あわわっと狼狽える私に、澪もおどおどしながら答えた。
「奈々子ちゃん、冬休みにお土産くれたでしょう?フルカワのマグカップ……」
「う、うん」
「だから、古川さんのご実家に行ったのかなって思って……」
「えっ!?ちょっ、ストップ!なんでフルカワからすぐに貴一さんに繋がるの!?」
(名探偵かっ!!)
確かに正解だけども、名字がたまたま同じとは思わなかったのかな……?
そう不思議に思う私に、澪は説明を続けた。
「私ね、フルカワの三代目の古川紋次郎の作品が好きで……自伝小説とかも読んだことあるの。その中で、お孫さんの名前で貴一って出てたから」
そう話す澪。
まさか澪も古川紋次郎のファンだったなんて思いもしなかった。
「だから冬休みにご実家に行くくらい奈々子ちゃんは古川さんと親しいのかなって……、もしかして違ってた?」
「……いえ、大正解です」
実家に行ったのは成り行きだけど、だいたい当たってる。澪ってば意外と鋭い。
「ていうか、澪がフルカワ好きとか意外なんですけどー」
「俺も」
「そうかな……?古川紋次郎さんってすごく面白い陶芸家さんだから、二人も知ったらきっと好きになるよ」
そう言って澪が三代目の古川紋次郎という人のことをいろいろ教えてくれた。
「古川紋次郎さんは世界的にもすごく評価されてる陶芸家でね。
あと、ハンバーガーが好きだったんだよ」
だから、ハンバーガーはどうでもいい。