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まっすぐ家に帰って、さっそく桃の花をママと一緒に飾った。
それから、ひなあられの代わりにカラフルな金平糖もちょこっとだけ飾ってみた。
「古川さんから貰った金平糖なんでしょう?本当に使って良かったの?」
「良いの良いの!色もなんか似てるし、可愛いでしょ?」
少し困った風な顔をするママに、私は元気良くそう答えた。
貴一さんから貰ったこの金平糖は毎日食べていたのと、今飾ってしまったので、瓶の中はもう数粒しか残っていない。
だけど。
「それに全部無くなったって貴一さんへの想いが消えるわけじゃないから、へーきだよ」
だから大丈夫!
そうにっこり笑うと、ママも笑って「さっすが!私の娘!!」と盛大にハグをした。
こうしてママに抱き締めてもらえるの、私はすごく好き。暖かいし、それになんだか優しい匂いがするから。
「……お雛様にお願いしないとね」
「お願い?なにを?」
「奈々子が、いつまでも健康で元気でいられますように。あと、古川さんと結ばれますようにってね」
「お雛様にそんな効果あるの?」
「あの人が買ってきたお雛様だから大丈夫よ」
「なにそれ」
思わず笑ってしまった。
ママは相変わらずお父さんが大好きだ。
だから私も、お父さんが大好き。
「ママ、あたし……」
「うん?」
「あたしね、ママとお父さんの子で良かったよ」
なんて、普段は思ってても恥ずかしくて言えないこともこの際口にしてみる。
だって、ママは今年も忘れずに私のお雛様を出してくれた。なんでも無い事かもしれないけれど、これって結構幸せなことだと思うから。
ママはなにも言わなかったけど、ぎゅうぎゅうに私を強く抱き締めてくれた。
そのことがまた嬉しかった。