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そうして一旦家に帰って着替えて、それからまた澪と待ち合わせした。
展覧会の会場は大きな百貨店のフロアの一つにあって、平日なのに結構人で混み合っていた。
もらったパンフレットをさっそく広げて、澪が読み上げる。
「三代目の古川紋次郎さんの作品が中心で、あとは新作も展示されてるみたいだよ」
「そっか。新作も……」
見れるんだ。
嬉しいような、どこか複雑なような……。
(できることなら、貴一さんに見せて欲しかったなぁ)
なんて思ってしまうわけで……。
気を取り直して展覧会の会場に入ると、古川紋次郎さんの作品がたくさん展示されていた。
その中の一部を見て私は、あれっと首を傾けた。
(これって……)
「やぁ、奈々子ちゃん」
「じっ、仁さんっ!?」
ふと違和感を感じた瞬間、横から声を掛けられた。顔を上げると、仁さんがそこに居た。
「なんで此処にっ!?」
「此処、うちの系列の店だから。展覧会は僕の企画だし」
慌てる私に、仁さんは相変わらずの王子様みたいなスマイルを向けてそう説明する。
(そっか、だから……)
さっき感じた違和感の正体がわかった。
展示されてる作品のいくつかは、どこかで見たことあるなって思った。これは以前、仁さんに見せてもらったコレクションだったからだ。
「奈々子ちゃんのお知り合い……?」
「あ、ごめん澪!この人、あたしの親戚なんだ!!如月仁さんっていうの」
澪に仁さんを紹介する。仁さんにも、「仁さん、あたしの大親友の神崎澪」と澪を紹介した。
澪と仁さんが互いに自己紹介をし終えると、仁さんが私たちをさらっとエスコートしてくれた。