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■ □ ■ □


ハンバーガーの話がガセだったからって、それって別にどうでも良いと私は思うわけで……。

それなのに、澪も仁さんもすごく残念そうな顔して落ち込んでしまった。

なぜそこまでハンバーガーに拘る。




「ハンバーガーのことは忘れてさ!ふたりともご飯食べなよ?冷めちゃうよ?ね?」


取り繕うように私が元気良くそう声を掛けた。

現在は場所を移動して、
百貨店にあるレストランの中。

落ち込む二人に貴一さんが話題を変えるように食事に誘って、そのまま今に至るわけで。

レストランの席に座るも、澪も仁さんも元気が無い。ハンバーガー恐るべし。



「もういいや、あたし食べちゃうからね!」

そう言って私一人でフォークを手にして料理を食べ始めた。


すると、

「ははっ」と向かい側から柔らかい笑い声。もぐもぐしながら顔を上げると、貴一さんが笑ってた。


「奈々ちゃんは相変わらず元気良いね」

なんて言われた。
そんな貴一さんの言葉に私は食べる手が止まってしまい、かぁっと顔に熱が集まる。



「ど、どうも……」

「うん」

ドキドキしながら返すと、貴一さんはまたにこりと頷いた。

前回とのギャップに私はドギマギ。
こんなに笑った貴一さん久しぶりに見たかもしれない。


「どんどん食べなよ」

「い、いただきます!……って、貴一さんは?食べないの?」


コーヒーしか飲んでない貴一さんに私は思わず尋ねる。

私の言葉に貴一さんは、困ったような曖昧な笑みを浮かべながらそっと自分の左手薬指の指に触れた。


(あ、これって、もしかして……)



「お嫁さんが晩ごはん作ってるんだ?」

思わずそんな言葉が口から零れる。

「うん、まあね」と、貴一さんがまた曖昧に笑う。



「貴一さんのお嫁さんってどんな人なの?」

「どんなって……」

「写真とか、無いの?結婚式のとか」


訊いてて、自分が心底嫌な女に思えた。
こんな、詮索するみたいなこと訊くなんて最悪。だけど口からどんどん言葉が出てきてしまう……。




「式は挙げなかったんだ」

貴一さんがぽつりとそう零した。


「式しなかったの?写真だけもなし?」

「うん、そう。なんせ急な縁談だったし」

「それは……駄目だよ……、お嫁さん、がっかりしたんじゃないかな……?ウェディングドレス着れなくて……」

「……そうかな」

「そうだよ。女の人の、憧れだもん……。写真だけでも撮った方が良いよ、貴一さんもタキシード着てさ」

「タキシード?僕もう結構なおじさんだけど似合うかな……」

「大丈夫だよ。貴一さんかっこいいから」

「ははっ、ありがとう」

「うん」



(あたし、なに話してるんだろう……)

貴一さんの結婚がダメになればいいと思ってるのに。なんでこんな応援するような言葉が出てしまうのだろう……。

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