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繋がり

■ □ ■ □



次に貴一さんと会ったのは、
卒業式の日のほんの数日後の日曜日。

如月の家でだった。


朝から仁さんに誘われて呼び出され、半ば強引に如月の家に連れていかれた。
なんでも今日は、仁さんの大叔母にあたる人の90歳の誕生日らしく、如月家で盛大な誕生会が開かれるらしい。



「だからって、なんであたしまで参加しなきゃいけないんですかっ!」

「まぁまぁ。大叔母さまの姪っ子なんだから、そんなつれない事言わないでさ」


抵抗する私に仁さんがにっこりと微笑む。そして、「それに」と付け足してこう言った。



「それに、今日のパーティには古川社長も来てくれるって」

「きっ、貴一さんもっ!?」

仁さんの言葉にかぁっと顔が赤くなる。
先日の展覧会の一件で、いつのまにか仁さんにまで貴一さんが好きなことがばれてしまったわけで……。



「……だったら余計行きたくないんですけど」

「そんなこと言わないで!その可愛い晴れ姿見せてあげなよ」


不毛なことは仁さんだってわかるはず。それなのに、わざとけしかけるような事を言われ私は頭痛がした。




(帰りたい……)

そう心の中で呟くものの、簡単に帰れるわけじゃない。


如月の家に着いて早々に仁さんのメイドさん方に身ぐるみを剥がされた挙句、七五三みたいな鮮やかな着物に着替えさせられてしまったから。

慣れない着物に、私はまったく身動きが取れないでいた。



「ほらほら、早く行こう!」

「ちょっ」


手を引かれ、エスコートされる。
そして、大きな広間まで連れていかれると、そこはドラマとかでよくありそうなパーティ会場だった。

たぶん、主役の大叔母さんのお祝いよりも、社交の場としてお金持ちが集まってるみたい。その異様な雰囲気に私はなんだか見ているだけで疲れてしまった。


「大叔母様への挨拶はもう少し後にしようか、なにか飲み物持ってくるよ」


そう言って仁さんが私のそばから離れる。正直、飲み物のことなんかより一人にされる方が辛いのだけど……。





「ふらふらしてると危ないよ」

「……へ?」


居場所が無くて辺りをふらふらしていると、ふいに後ろから声を掛けられた。反射的に振り返ると、貴一さんが立っていた。



「きっ、貴一さんっ!?」

「やぁ。今日はお招きありがとう」


そう言ってへらっと貴一さんが笑う。
私は突然の貴一さんの登場にあわわと一人で焦った。

だって話し掛けられるなんて思ってもみなかったし……。



それに、貴一さんの格好が和服だったから。

スーツとかだらっとした普段着とかは見たことあったけど、和装なのは初めてだった。


着物を着た貴一さんはこれまた渋くて色っぽくて、とにかくかっこよかった。



(家だったら絶対今頃ベッドにダイブしてきゃーきゃー転がってる……)



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