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彼、古川 貴一さん
41歳。
二周り以上。二周り以上も年上なんですけど!!
しかも……
「ちょっ、ねぇ、陸。ちょっと確認なんだけど……」
「なに?」
「あたしの聞き間違え?さっき古川さんのことバイト友だちって……、店長さんとかじゃなくて?」
古川さんに聞こえないように陸に詰め寄った。すると陸がにこりと曇りの無い笑顔を浮かべて答えた。
「え?いや、バイトだけど?あ、俺より後から入ったから、年上だけど俺の後輩。教育係なんだ、俺」
「へー、そうなんだー」
笑顔が引きつった。
頭の中で危険パラメーターがぐんと上がった。気がする。
けど、二周り以上歳が離れているだとか、定職に就いてないだとか、頭では大事なこととわかっているのに気持ちはそうもいかなくて……。
「貴一さんはご結婚、とか〜」
「結婚?ないない。独身貴族だよ」
「そうなんですかぁ〜」
(え、独身!?やった!!!!)
ちゃっかりとさりげなく独身かどうか確認するとか、下の名前で呼んでみたりするとかしちゃう私。
しかも独身だと知って心の中でガッツポーズ。
私は私が思う以上にしたたかだった……。