1641
12/ December
しかえしのキス
12月。どこもかしこもクリスマスカラーに包まれるこの季節。
街中はもちろん、学校の中でもそれは例外じゃない。
掲示物にはサンタのイラストがあったり、文芸部の部室の窓にはサンタやツリーのステッカーが貼ってあったり。
そして、廊下にはなぜだかクリスマスツリーが準備されていたり。
「相沢ー、これの飾り付け手伝ってくれ」
放課後。いつものようにお茶しようと思って保健室に立ち寄ると、保健室前の廊下には大きめのクリスマスツリーが置いてあった。
保健医の森川先生はその飾り付けの最中で、半ば強制的に私もそれを手伝わされることになってしまった。
「なんでこんなツリーが学校にあるの?」
「校長先生が奮発した」
「バブルだねー」
なんてことを話しながら、キラキラのオーナメントをツリーに括りつける。
クリスマスツリーの飾り付けを自分でしてみると、なんだかクリスマス気分が一気に増してくる。
「先生はクリスマス彼女とデート?」
「まぁな」
「付き合ってもう5年だっけ?そろそろプロポーズ?」
「……やっぱり、そろそろだって思うか?」
もふもふの綿を雪のように見たててツリーに乗せていた森川先生の手がぴたりと止まる。
「やだ、先生、まさか本当に……?」
うっかり図星を突いてしまったらしい。恐る恐る先生の顔を覗き込むと、先生はなんだか神妙な顔つきだ。
「こないだ指輪買った」
「おおぅ」
先生の言葉に私も思わず声が漏れる。
プロポーズとか指輪とか、私がそういうのに憧れてるからか、他人事ながらもきゅんとときめいてしまう。
「もしかしてもしかして、先生緊張してますー?」
「しない方がおかしいだろ!?」
茶化す様に私が言うと、照れ隠しなのか先生が怒った風に言い返してくる。
でも耳は真っ赤っか。