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先生の言葉の意味を尋ねようとしたらタイミング良くチャイムが鳴ってしまい、結局あの言葉の意味は聞けず。

私は木箱と手紙を持って教室に戻った。
木箱は中身が陶器なだけにすぐに鞄に入れた。一応タオルをクッションみたいにして割れないように。



手紙の方は授業中こっそり読んだ。

実のところ、今日は学年末テストの前日だから本当は授業聞いてないとマズイのだけど……でも、家に帰るまでなんて気になり過ぎてどうしても待てなかった。



『奈々子さんへ、先月はまた大変素敵な贈り物を頂き、有難うございました』


手紙の書き出しはそんな文章で、流れる様な達筆な文字だった。

その文字を目で追うにつれ、授業を進める先生の声もざわつくクラスメイトの話し声も、なにも耳に入ってこなくなった。


手紙の続きは、主に貴一さんの事に対する謝罪文だった。

貴一さんが跡を継ぐことを急いだばかりに、私と別れてしまったと。本当に申し訳ないと。たくさん、たくさん、謝罪の言葉が綴られていた。


(謝るのは、あたしの方なのに……)

手紙をぼんやりと見つめながら私は心のなかでそう呟いた。胸の奥がすごく痛かった。

だって、私、本当は貴一さんと付き合ってなかったんだから。婚約者とか、本当は全部嘘だったんだから……。



心のなかで懺悔しつつ、文字を読み進めていくと、手紙の最後の方は少し思いも寄らない言葉で締めくくられていた。


『 こんな事になってしまったけれど、それでも奈々子さんがもしまだあの愚息のことを想ってくださるならば、その時はどうか貴一のこと末永くよろしくお願い致します。
花どきの習いで気候も不順になりがちのこの頃です。くれぐれもご自愛下さい。

古川隆雅 』



全て読み終えて私は手紙を閉じた。
頭のなかには純粋な疑問が浮かんだ。

よろしくお願いしますってまた言われてしまった。それも末永く。


(どういうこと……)


だって、そんなこと普通は貴一さんのお嫁さんに言う事であって、相手は私じゃない。


(それなのにどうして……)