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■ □ ■ □


6限目の社会科の授業は、自習になった。

テスト勉強の時間にと先生からは言われたけれど、真面目にテスト勉強しているのはクラスの中で半数くらい。
あとの半数は勉強しつつ雑談してたり、スマホ弄ったり、あと寝てる奴もいる。


私はどっちかと言えば、テスト勉強してない派。というか、どうしても勉強が手に付かない派だ。

だって、あの隆雅さんからの手紙の内容が意味深過ぎて勉強に集中できないんだもん。



「……奈々子ちゃん」

机でだらけていると、ふいに横の方からこっそりと声が聞こえた。顔を向ければ、机の横で澪がしゃがんでた。
どうやらこっそり席を移動してきたみたい。体をちっちゃくさせてるから、なんだか座敷童みたいで可愛い。


「澪?どうしたの?」

「あのね、放課後時間ある?」

「放課後?暇だけど……」

「良かったら一緒にお菓子食べないかなって……」

「お菓子?」

「うん。あのね、陸君に貰ったの。ホワイトデーだからって」


そう言って澪が恥ずかしそうに話す。

逆チョコ渡して、さらにやっぱりホワイトデーまで用意してるとは……。陸ってば、ほんと澪大好きだな。


「でも良いの?あたしまで食べて……澪が貰ったのでしょ?」

「うん。いっぱい作り過ぎたんだって……たぶん、2人だけじゃ食べきれないから。陸君の方から奈々子ちゃんもって言ってくれたの」


しかも手作りとか。

(なんなのあいつ……イケメンで人望あって、勉強も運動も得意でさらにお菓子まで作れるとか……)

どんだけハイスペックなのよ。




「ちなみにどんなお菓子?」

「えっとね、シュークリーム」


(乙女かっ!!)

なに可愛いもの作ってるんだ。おい……。




……そうしてその放課後。

教室に残って陸の作ったシュークリームを食べた。

びっくりするほど美味しかった。


「……なに、陸ってお菓子作りも得意なわけ?」

「得意じゃないよ。今回も前のバレンタインの時も、すげー練習したから」


私の言葉に陸がそう言い返す。

澪ってばどんだけ愛されてるんだか……。


「あー、そういえば陸のお姉さんって、お料理上手だもんね。教えて貰ったの?」

「まさか、茶化されるの嫌だし。貴一さんちのキッチン借りて一人で練習したんだよ」

「……えっ」



な、なんだって……!?

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