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貴一さんの髪を触りながら、私は自分の気持ちを貴一さんに全部打ち明けた。如月の家のことも、考えている将来のことも。
すると案の定、貴一さんは「そんなことしなくていい」と言った。
そう言われると思ったから言い出し辛かったのに……。
「……僕に釣り合うとかどうとか、そんなこと考えなくていいんだよ」
「けど、あたしはそれじゃ嫌なの……」
他の人にどう見られるかよりも……私は、今の私が嫌だった。
貴一さんに甘えて、子どものままの私が。このままずっと守られて生きてくのなんて嫌。
甘えて欲しいし、守りたい。頼られたい。
それに……
「あたし、将来は貴一さんの老後の面倒見るって決めてるの」
「……はい?」
貴一さんが珍しく間抜けな顔をした。
私はそんな彼の反応も御構い無しに言葉を続けた。
「だから老後!あたしがバリバリ稼いで貴一さんに楽させてあげるからね!」
「えっ!?ちょっ、奈々ちゃんっ!?」
気合を入れて宣言すると、きっと予想外な言葉だったから貴一さんはすごく困惑していたわけで。
そんな貴一さんに、私はふふっと笑ってみせる。この狡い大人のおじさんから、やっと一本取ってやることができたと思うと嬉しくて堪らない。
貴一さんと釣り合いたいというのもあるけど、やっぱりバリバリ稼ぎたいっていう希望もある。だって、ずっとずっと貴一さんと一緒に居たいから……。
「言ったでしょ?あたし、ずっと貴一さんと一緒に居たいの。側に居させて欲しいって」
「だからって、なにもそんな現実的なこと……ていうか気が早いよ。おじさんまだ老後の事とか考えたくないのに……」
「ゆとり世代はね、不景気に生まれたからこーゆーとこは結構現実的なの!」
「さいですか……」
「ね?わかってもらえた?あたしの決心!」
そうにっこりと尋ねると、貴一さんも観念したように小さく溜息を零した。
「まいったねぇ……やっぱり奈々ちゃんには敵わないや」
「えへへ、老後が楽しみだねぇ貴一さん」
「だね」
そう言って貴一さんとクスクス笑い合う。こんな風にいつまでもずっと笑い合っていたい。
ふたり一緒に居られたら、きっとどんな未来も楽しいと思うわけで……。