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貴一さんの部屋に戻って、それからたわいもない会話をして楽しい夜が更けていった。
寝る前には洗面台を借りて歯磨き。
私用の赤い歯ブラシが嬉しい。
シャコシャコと念入りに歯磨きしてから貴一さんのいるリビングに戻ると貴一さんが電話していた。
「……えー?下心?ないない!ほんとだよー、相変わらずやよいちゃん僕のこと信用してないよねー……え?そんなことしないよー?
あぁ、今夜?んー、今夜はダメかな。また今度の夜にさぁ……」
(下心?やよいちゃん?また今度の夜に……?)
それもなんだかとってもアダルト単語が飛びかう会話で、思わず私は心の中で呟いた。知らず知らずのうちにリビングに入ろうとしていた足も止まっていて、隠れるように息を潜める。
「でも、相性はいいでしょ僕ら……それでさぁ……」
貴一さんはさらに会話を続けていて、私は混乱で打ち震えた。
(なっ、なっ……なんの相性がいいのよーーっ!?)
心の中で大絶叫。
だって、電話の相手はきっとあの松嶋やよいだ。すっかり忘れかけていたのに……貴一さんは、まだその人と繋がってたなんて……。
(まじ信じらんないっ!!貴一さんのバカ!バカ!バーッカ!!エロおやじ!!)
手のひらをぎゅっと握り締める。そうしないと泣いちゃいそうだったから。
浮気とかそんなのしないって前に貴一さんが言ってたから、頭の中ではきっと大丈夫って思ってる。だけど、気持ちの方がついていかない。
怖いくらい心臓がドキドキしてて落ち着かなくて……
(ていうか、いまだに松嶋やよいと連絡取ってるとか……)
ネガティブなことがつい思い浮かんで。
(夜に会ったりとか……)
一番考えたくなかったことを考えてしまう。