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真っ赤な顔を隠すと貴一さんがふふっと笑いながら抱き締める。
「奈々ちゃん可愛い」
「うっ、うるさいっ!!」
大人しく抱き締められながら、貴一さんに言い返す。完全な八つ当たりだけど。
「あ、そうだ。ちなみに、陸君もやよいとは友達だから心配と思うなら聞いてみるといいよ」
「う、うん……」
そこまで言うなら本当の本当なんだろう。もう心配とか、嫉妬とか全く抱いてない。ただただ恥ずかしいだけだ……。
(っていうか、陸ってば小5の女の子とも友達なの?あいつのネットワークどうなってるのよ……)
「なんなら本人に電話してみる?」
「別にいい……」
「あ!一応写真とかもあるけど見る?」
「しっつこいっ!もういいってばっ!」
誤解を解こうとしてる風に見せて、実はすごいからかわれてる。顔を上げれば、貴一さんがそれはいい笑顔で笑っていた。
「奈々ちゃんが那由多と浮気するなんて言うからだよ?」
あ。やっぱり怒ってたんだ。
「うっ、それは……、ごめんなさい……」
そう素直に謝ると、ひょいっと体を持ち上げられてそのままベッドの上に落とされる。
「ちょっ、きーちさんっ」
「誤解も解けたし、仲直りしよっか?」
「ぎゃーっ!!ごめんってばぁっ!!」
これはどう考えても、仲直りという名のお仕置きだ。
「押し倒しても良いんでしょ?」
なんてもう押し倒しながら、貴一さんはいつかの台詞を口にする。私は恥ずかしくなって視線を逸らす。
するとちゅっとおでこに優しいキスが落ちてきた。
あぁ、もう……貴一さんは本当に……
「ずるい……」
「うん。大人はみんな狡い生き物なんだよ」
「うわ、開き直った……」
本当に、狡い大人だ。
-March-