1641
あたし、相沢 奈々子
16歳。女子高生。
突然ですが、
おじさんの婚約者になっちゃいました。
■ □ ■ □
平凡な女子高生のあたしに、ある日いきなり年上の婚約者が出来てしまった。いや、"出来た"というより、"居た"と言った方が正しいのかもしれない。
私が生まれる16年前よりももっと昔に、私の父方の親戚…シキ叔母さんが勝手に取り付けた約束で。私は生まれながらに婚約者…いわゆるイイナズケという存在が居たのだった。
(そんな漫画みたいな……)
その話を聞いた時本当にそう思った。
だって今時許婚って本当に存在するんだっと、平成生まれのあたしには呆気に取られるしかなかった……。
そしてあたしが呆気に取られている間に周りの大人たちは着々と準備を進めていたらしく、本当にいつの間にか婚約者のその人と会う事が決まってしまったのだった。
五月晴れの日曜日。
とあるお高そうな料亭の一室にて、いかにもお見合いですという雰囲気のもとに初めての顔合わせ。
「古川家長男。古川貴一です」
現れた婚約者の人はきっちりとスーツを着込んだ大人の男だった。隙なく髪は後ろへ撫でつけられていて、精悍な顔の輪郭がはっきりとわかる。
古川貴一と名乗ったこの人は、目鼻立ちがはっきりとしたイケメンで。背はとても高かった。年上とは聞いていたから、見るからにおっさんって雰囲気の人じゃなくてほっとした。
けど、ほっとしたのも束の間。実際の年齢は思っていたよりかなり年上だった。
聞けば2周り以上も年上だとか。
これにはお互い気まずかった。
だって親子ほど年が離れてるんだから。年上とは聞いていたけど、ここまで年が離れてるなんて予想外過ぎた……。
「……16って事は、まだ高1か高2だよね?」
「はい。えっと、今高2です……」
確認されて答えると、古川さんは困った様な顔をした。
それもそうだ。
だって私はまだ未成年で学生で、一方の古川さんは社会人でどこかの社長さんらしいから。
お互いにこの縁談はないなって空気になって、そのまま古川さんの方からお断りを入れてくれると約束してくれた。
正直ほっとした。
そしてその日はそのままお開きになったのだけど、シキ叔母さんがこの結果を許してはくれなかった……。
「だからってなんでいきなり同棲なのよ!!」
「まぁまぁ、もう決まった事だし仕方ないじゃない」
娘の一大事だってのに、のほほんと笑ってるのは私のママ。
一大事というのは、例の婚約者の古川さんと半ば強制的に同棲が決まってしまったからだ。
古川さんから破談の申し入れがあったものの、シキ叔母さんはそれを許してくれず。あろうことか無理やりくっつけようと画策してきたのだった……。