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「良いじゃない。古川さん、イケメンで優しいわよ?」
「そういう問題じゃないの!同棲なんてありえないでしょ!?」
「あら、だってお互いの事をよく知ってからちゃんと結婚かどうか決めた方が良いでしょう?そのためには一緒に過ごした方が手っ取り早いわ。お互いに生活リズムが違うんだから」
「うっ……」
もっともらしいことを言うママ。
だからってまだ16の娘をどこぞのおじさんと同棲させるなんて…と思ったけれど、あたしのママもかなり破天荒だから抵抗しても無駄だとすぐに悟った。
そうして私は諦めて荷物をまとることとなった。
■ □ ■ □
「こんにちは。お世話になります」
「こんにちは。いらっしゃい」
訪れた古川さんのマンションのお部屋。
出迎えてくれた古川さんは、初めて会った時とは打って変わってラフな格好をしていた。隙なく撫でつけられていた髪の毛も今はくしゃくしゃで、ふわってしてた。
「どうぞ上がって」
「お、お邪魔しまーす」
促されて、ドキドキしながら玄関に入る。
「なんか……ごめんね?」
「へ……?」
「……ちゃんと断りきれなくてこんなことになって……」
「いえ、そんなことは……っ!!あの、全然ヘーキですから」
古川さんの方から謝られてしまって、慌てて首を横に振る。むしろ私の方が古川さんの家にご厄介になるとか迷惑かけてるのに、と思っていたたまれない。
「でも、彼氏とかに怒られたりしない? 僕のことは親戚とか保護者ってことにしていいから……」
「えっ!?あの……っ」
「ん?」
「かっ……彼氏とか、いたことないんで、大丈夫です……っ」
申し訳なさそうに気を遣って言ってくれる古川さんに、思わずそう申告する。
すると古川さんは少しだけ驚いた様な顔をした。
「彼氏いないの?そんなに可愛いのに」
「っ!?」
(かっ、可愛い……っ!?)
思いがけないその言葉に、ぼっと火がついたみたいに顔が赤くる。さっきの緊張とは違ったドキドキが私の体を駆け巡った。
どうやら私の婚約者のおじさんは、天然たらしっぽい……。