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■ □ ■ □
「まずは自己紹介でもしようか」
「自己紹介…?」
古川さんの言葉にきょとんとなる。
だって自己紹介なら前に会った時にだってしたのだから。
「前の自己紹介は、家の事とか素性とかばかりだったからね。それとは関係なくさ、お互いの事知る必要あるでしょ?これから数日一緒に暮らすんだし」
「あっ!それもそっか……。わかりました!なんでも聞いてください!」
古川さんの話にうんうんと頷く。
確かに一緒に暮らす以上、好き嫌いとか知ってた方がスムーズなわけで……。
そうして、お互いの質問タイムが始まった。
「……えーっと、じゃあ次の質問!好きな動物はなんですか?」
「うーん……クジラ?」
「クジラ!?なんでですか?」
「大きいから」
質問してて知った事。それは、大人だと思ってた古川さんは、思いのほか子どもっぽいところがあること。
好きな食べ物はカレーとかハンバーグで、嫌いな食べ物は煮物とか野菜とか。趣味はゲーム。
現に今だって、好きな動物を聞いたらクジラって返されて、好きな理由が大きいからって答えもなんだか子どもっぽくて可愛いと思った。
「じゃあ、奈々子ちゃんは?好きな動物」
「あたしは…犬が好きです」
「それは、どうして?」
「えーっと、可愛いから?人懐っこくて賢いし…」
「飼ってたことあるの?」
「ないです。うちのママがアレルギーみたいで」
「そっか……僕はうちの実家でね、飼ってるよ。八太郎って柴犬」
言いながらスマホにある写真を見せてもらった。食パンみたいな綺麗な毛並みのもふっとした柴犬。
一目見た瞬間、きゅーんっと心を奪われてしまった。
「かっわいい!」
ついつい猫かぶりも忘れてはしゃいでしまうと、古川さんに優しく笑われた。
「言葉遣いさ、普段通りでいいよ。遠慮とかあるかもしれないけど、話しやすいようにしていいから」
「ありがとうございます……えっと、じゃ、そうする」
言われてこくりと頷くと、古川さんはよく出来ましたという風に私の頭を撫でた。
初めて触れる大きな手に、
ドキドキした。